第6章 私は食虫植物になりたい
「うわぁ、エロエロドロドロだね?」
語尾にハートマークを愛らしくそえながら彼は私の下着の中身を軽く言い当ててしまう。
「そんな...こと、ない」
唇の端を軽く噛みながら、すっと目をそらす。
少し動いただけで下着が私のそこをこすれ、びくりと身体が反応する。
あぁ、ダメだ。
キスだけでこんなにしてしまうだなんて...。
それ程までに私は彼に溺れているのだ。
「ねぇ?その癖、やめた方がいいよ?」
ハッとして唇を噛むのをやめる。
私が嘘をつく時にする癖、そんな事など彼にはおみとおしで全てを見透かされてる。
「せっかく綺麗な唇なのに...」
彼は私から少し離れ、自分のカバンをまさぐって小さなピンク色のポーチを取り出す。
じじじとポーチが音を立てて、白色のリップクリームを手におさめ私の目の前にやって来る。
つうっと一筆薄くリップが私の唇に塗られた。
「ほら、これで大丈夫」
ふわりと笑ったと同時に、桃の甘い香り。
甘すぎるそれは私には似合いそうにない。
ぼんやりと彼を見つめれば、彼の瞳に私がうつる。
「透ちゃん?」
頬に熱を灯す、じわじわと湧き上がるそれは自分では止めれない。
私をみつめる彼の黒目は上質な黒真珠に似ていて、あんまり綺麗なものだから取り出してしまいたい。
利き手をのばして、そうっと彼の頬に触れる。
気持ちよさそうに私の手に擦り寄る彼は、そっと目を閉じた。
黒真珠の光がなくなり、長いまつ毛が影をつくる。
「ふふっ、くすぐったぁい」
可愛らしく、あざとく、そんな事はわかっているのに、彼の策略に私はまんまとはまるのだ。
手のひらから伝わる感触さえも愛おしい...。