第5章 君に愛ある手料理を
それからというもの、僕が読む本が求人雑誌の他に増えた。料理本と拒食症について書かれた本。
残念ながら拒食症についての本は、笑えてしまうほど理解できなかったけれどなんとか料理本は解読できそう。
「なーに?またライジングしてるのー?」
ちゃちゃを入れてくる長男は、料理本と睨めっこしてる僕の真横からにょきっと顔を出す。
「違うよ、ほら今どき男だって料理できなきゃダメな時代だと僕は思うんだよね。なんてたって、男女平等がうたわれてる時代だし?そう思わない?」
「うわあ、ライジング、ライジングしてるねぇ」
やれやれと首を横にふる長男の言葉をききつけて、僕の目の前で雑誌をめくっていたトド松も話に入ってくる。
「なーに?またチョロ松兄さんがライジングしてるのー?」
「そーなのよトッティ、どうせまたビックバンおこすつもりなのよー」
「おきるか!そんな頻繁にビックバン起こしてたら死ぬわ!」
「「実際起こしたから二人して止めてんじゃん」」
言いたい放題二人していいやがって、おまけに同じタイミングをそろえたみたいに...。
パタンと料理本を閉めて、僕は2階から退散する。
トントンと降りた先にある玄関の戸口に、なにやら黒い影がソワソワと行ったりきたりしてるのが見えた。
「なんだろ?」
家に居ないのはカラ松、一松、十四松。
カラ松なら普通、といってもイタい台詞とともに入って来るだろうし、一松はさっき出かけたばかり、十四松は勢いよく入ってきて戸口は見るも無残になるだろうしな...。
そんな事を考えながら観察していたら、トントンと戸口を叩く音。
「す、すみません。チョロ松さんいらっしゃいますか?」