第5章 君に愛ある手料理を
蓋をしてタイマーできっちり3分はかったあと、お盆にラーメンと割り箸とお茶を用意して玄関に向かう。
戸口をぼんやりと見つめるその子に声をかけると、くるりとこちらを振り向いた。
「おまたせ、ごめんね?ラーメンくらいしか見つからなかったんだ」
コトンと目の前にお盆を置く。
「ちゃんと3分はかったから、食べて大丈夫だよ」
にこっと笑いながらそう言ったら、じいっと僕を見つめる。
「遠慮しないで、食べていいよ?」
「...」
何も言わない、でも静かに手を合わせた後にぺりっと封をとる。その後じいっとラーメンを見つめる。
「はい、お箸」
パキッと割った割り箸を渡してあげると、恐る恐る箸を受け取るその子。そう言えば名前聞いてないや。
ゆっくりと麺をすすり始めるのを見届けながら、食べ終わるタイミングを見計らう。
ごくんとひと口飲み込んだのを確認して、僕は口を開く。
「そう言えば、名前聞いてなかったよね?僕は松野チョロ松、君は....って?」
むせこんだ。
僕がじゃない、目の前の子がだ。
「ごほっごほっ...けふっけふっ...」
僕のいる側と反対を向いて、口に手をあてるその子の呼吸は粗くなる。
とりあえずどうにかしてあげようと、背をさすった瞬間だった。
「ごほっごほっ!う、うぅぇぇぇ!!!」
それはあまりに突然で、ただ呆然と目の前にぶちまかれたそれを見ていた。げほげほと咳き込む音。
フローリングの玄関に異臭と、ちぎれた麺が散らばる。
「だ、大丈夫!!?!」
焦りつつ、その子の背をさする。
そしたらその子は泣き出した。
「うっ、ううっ、ごめ、せっかく、よ、うい、してくれた、のに...」
「そんなのいいから!ほら、はやくお茶飲んで」