第5章 君に愛ある手料理を
「着いたよ」
いつもの見慣れた戸口に立って、そう言った。
「凄く、古風な家だね」
微妙な褒め言葉に、チラリとその子を見つめる。
やっぱり可愛い子だ、顔が青白くさえなければだけど...。
ガララと戸口を開けて、玄関にゆっくりと座らせる。
かちこちと柱時計の音が良く聞こえる我が家。
どうやら他の兄弟達は家にはいないらしい。
「とりあえず、なにか食べ物探してくるからちょっと待ってて」
さすがに家の中までいれたら怖いだろうと、玄関で待っているようにいう。こくんと頷いたのを確かめて、僕はキッチンへと向かった。
キッチンにいけば母さんがいると思ったんだけど、残念ながら見当たらない。時計を見れば丁度夕食の材料を買いに行く時間だった。
「仕方ないな...」
もちろん僕は料理なんてできやしないし、なんて困ってゴソゴソ戸棚を漁る。たしかここら辺だったはず。
「あったあった」
おそ松と十四松がよくラーメンを食べるから、戸棚にはインスタントラーメンが備え付けられてる。
片手鍋に水をはり、ばちんとコンロに火をともす。いくらニートでもラーメンくらいなら作れる。
水が煮えるのを待ちながら、ぼんやりとするこの時間。そう言えば名前を聞いていなかったけれど、あの子なんて名前なんだろう?
そういや封を開けていなかったと、機械的にラーメンのフィルムを剥がして蓋を開ける。
そもそも未成年家に連れ込むのってどう?
いやいやあれは非常事態だったし、別にやましい気持ちなんてこれっぽっちもないし...。
かやくをいれながらそんな事を考えていると、グツグツと鍋の水が泡を出す。
そろそろかと、インスタントのカップに湯を注ぎ蓋をした。