第5章 君に愛ある手料理を
「あっ、えとごめん、でもその」
つい支えたけど相手は年頃の女の子、いっぽ間違えたら通報されかねない。無職、おまけに童貞とくれば、間違えを犯したなんて思われても不思議じゃない。
「...すみません」
僕の腕を弱々しい力で掴む。
それにしたって、本当に女の子って折れそうなほどか弱いんだななぁんて...。
いや!ロリコン趣味じゃないよ!?
「その、とりあえずなにか食べたら?」
盛大にお腹を鳴らしてたって事は、多分食べてないからだよね。そう思ったんだけど、だんまりを決め込み歩いていこうとする。
その都度ふらつくから、また僕が急いで駆け寄る。
「すみません、大丈夫です」
青白い顔してそう言うもんだから、さすがに僕もイラついた。大丈夫な人間が道端で倒れるわけもない。
そういう時はつい短気になってしまう、僕の悪い癖がでる。
「いい加減にしなよ!大丈夫な人間がふらつくわけない!」
「ほっといて、別に貴方に迷惑をかけてない」
これで僕の短気スイッチは完全にONだ。
「迷惑かけてない?道端で倒れられてたら迷惑だから!ほら!掴まって!」
今にして思えば馬鹿な事をしたもんだし、短気だな呆れてきちゃうけどほっとけなかったんだ。
「...なに」
「いいから!家、すぐ近くだから!」
「...それって」
戸惑うその子、そりゃそうだよね?
見知らぬ男に家に来いなんて言われたら怖がるのは当たり前。
ふっとそれが過ぎって一つ深呼吸。
早口になる僕の悪い癖を少しでも緩和する為に、深く深く息を吐く。
「実家だよ。何もしない、ただ君が心配なだけ」
そう言ったらその子は口を開かずにこくんと頷いた。