第4章 君が乞われてしまう前に
抱き締めてどれくらい時間がたったのかなんてわからないけど、オレの胸を冷たい手が押す。
「...わた..し...十四松くんを...裏切れない」
力ない抵抗。
そんなのオレだって同じ、こんなゴミクズを兄さんと慕って笑ってくれる十四松を裏切るなんてできるはずない。
「は...なし...て、私は、大丈夫」
おまじないを唱えるみたいに「大丈夫」と唱える。
大丈夫じゃないからなんてわかっている。
「...大丈夫じゃ、ないくせに」
「言わないで...」
がしゃんとブランコを離す。
涙でぐしゃぐしゃな顔、なんであんたを好きになっちゃったんだろう。
「...ごめ...ごめんね」
謝るあんたの頭を撫でた。
これ以上は、お互いの傷を深くするだけだとよくわかっていた。
秋風が冬を連れてくるみたいに、この想いは氷らせてしまおう。
「...オレが...悪いから、謝らないで」
「でも...でも...!!」
「...オレが悪いでいい、ゴミクズだから」
どんなに想ったところで、欲しくなったところで、やっぱり十四松にはかなわない。
「ごめん...なさい、それ...でもわた...十四松くんが...」
どんなに悲しい想いをしても、それでも十四松を選ぶなんて本当に...。
馬鹿な、馬鹿な女...。