第4章 君が乞われてしまう前に
ひゅうっと強い風。
目の前に泣く寸前の弟の大切な女。
オレはこの女が大嫌い...。
なのに...
オレはブランコごとそいつを抱きしめた。
「...あんたの自分さえ我慢すればいいって思ってる所がオレは嫌い」
「...え?...一松く、なに?...え?」
「本当は、甘えたいくせに我慢して十四松を甘やかしてるあんたがオレは嫌い」
悪態をつきながら、オレは腕に力を込める。
そのたびにジャラジャラと鎖が鳴り響く。
まるで、オレを責め立てているみたいに...。
「それでも、あいつに応えようと必死になってるあんたが健気で、それで...」
ーー愛おしい
強い冷たい風がふく。
気づかなきゃよかったと思う事がポンポンと口から飛び出して、この女は弟の大事な人なのに、そんな事はわかっているのに...。
頭ではわかっているのに、心はわからない。
お願い、オレを振り払ってって願う。
それなのにぐっと掴まれる服の裾。
心と連動して今まで張り詰めさせていたものが、シワだらけでくたびれていく。
「...ど...して、気づいちゃうの...なん...」
ぼたぼたと零れる水が冷たい。
風にふかれてなお冷たい。
「なんで...気づいたのが...あなたな...の?」
突き放そうとする言葉に、離せない手がオレの腕に絡みついてくる。
離したいけど離せない、お互いがお互いに...。
「...そんなの言わせないで」
言ってしまったら、きっと最後だ...。