第4章 君が乞われてしまう前に
「んーー!!おぉぅぃいしぃぃ!!」
「もー、十四松くんたら、またこんなにいっぱい口につけちゃって!」
十四松の口の周りはショートケーキの生クリームだらけ、こいつ本当に何歳なんだとか思ったり思わなかったり?
そんな子どもらしさMAXの口元を彼女さんはティッシュで綺麗に拭いていく。
これもまた今の松野家では日常茶飯事。
「んー!透ちゃん!頭なーでてー!」
「うん、わかったよ?本当に十四松くんは甘えん坊さんだね?」
彼女さんは十四松の頭をよしよしと撫でだす。
横でイチャつき出すのもまた、日常茶飯事。
とっても幸せそうに笑う2人。
...やっぱりオレは彼女さんの事が嫌い。
「一松くんケーキ美味しい?」
そんな事を考えていたら、いきなりの質問が現実へオレを引っ張り出す。
「...別に」
丸型のチョコケーキをつつきながらそう言ったら、十四松と目を合わせた後に困ったような顔をする。
「違うんだよ!本当は美味しいんだよ!僕この間このチョコケーキ食べたから知ってるもん!周りのチョコがトロって溶けて、中はふあふあで!」
あわあわしながら必死にフォローする十四松。
へー、そういう事には気づくんだ。
「大丈夫!わかってるよ、ね?」
何をわかってるのかは知らないけど、十四松のフォローにニコニコする。
フォークでチョコケーキを一口大にしながら、機械的にほおりこむ。
チョコのコーティングと中のブランデーを染み込ませたスポンジと甘さ控えめな生クリームが合わさって、ちょっと大人の味がする。
絶対に十四松の好みじゃない、そんな物を彼女さんが買ってくるわけない。それに日頃十四松がケーキを食べるとかあんまりない。
彼女さんを守る為に嘘をついてるんだとすぐにわかった。