第3章 疲れた時は、側にいて?
「にゃーーーん!にゃむにゃむ!にゃ?」
今道路にいるんだけど、オレが言うのも何なんだけど、怪しい女がいる。
「にゃーー?」
何が怪しいかって、猫語で猫に話しかけてる。
呆然とその姿を見てたら、若い女が二人怪しい女の横を通りすがる。
「うわー見て、猫と話してる」
「自分も猫ですってか?きもー」
そんな罵声が聞こえたのか、怪しい女は猫語を話すのを辞めてしまった。
さすがにあれはないわってオレもひいてたけど、なんでか側に寄っていく。
「あははっ、暴言あびせられちゃったじゃん。ねぇ?お前のせいだよ?なんか言ってよ?」
猫が話せるわけないのに、そんな事を言ってわしゃわしゃとまた猫と戯れる。
凄く優しい目をして猫を撫でるその女は、どうにも怪しい変な奴ってだけには見えなくなってきた。
「ん?お腹空いたの?仕方ないな...コンビニで...」
いきなりくるりと振り向かれて合うのは目と目。
正直気まずい。
そんな静寂を打ち破るのは猫の鳴き声。
どうやら本当にお腹が減っているらしい...。
「...ん」
ふところから取り出した猫缶を女に渡す。
そしたらなんでかボロっと涙を零すもんだから、ぎょっとする。
「...な、なんで泣くの?」
「...いや、優しい人だなって思って。すみません、後、ありがとうございます」
猫缶を受け取ってその女はニコリと泣きながら笑った。
カコンと猫缶を開けて猫の前に置く。
はぎゅはぎゅと美味しそうに猫缶を食べる猫をみながら、女にポケットティッシュを渡す。
「...オレよりも、あんたのが優しいと思うけど?猫のかわりにお礼言ってさ...」
「いや、見ず知らずの女にティッシュくれる人の方が優しい」
「いや、オレなんてただのゴミクズ」
「いや、私なんてただの変人」
終わらない褒め合いとネガティブに、小さく二人ふっと笑う。
「ねぇ、明日もここに来たらゴミクズに会えます?」
「会えるんじゃない?オレも変人みたいかも...」
その言葉にまた笑って、気づけば空っぽの猫缶の中身。
また明日と素直に言えない者同士は、同時に手を伸ばしまた笑う。
ーゴミクズと変人は猫缶に誘われてー