第3章 疲れた時は、側にいて?
「また眠れないの、本当に不眠症だね?」
とんとんと透ちゃんをあやしながら、ぽつりと呟けば布団に隠れる。
「ごめんなさい。」
小さな声が闇に消えて、世界はまた静寂に変わる。
毎回毎回透ちゃんが眠れない夜に呼び出される僕は、さしずめ透ちゃんの安眠枕。
添い寝フレンドという奴だ。
「ほら、謝らないって約束したでしょ?」
そう言って困った顔をすると、透ちゃんもまた困った顔をする。
「だって、本当は悪いことってわかってるから」
うるっと涙をためだしてしまうものだから、僕はそっと透ちゃんの涙を指ですくいとる。
「僕は透ちゃんと眠れて嬉しいよ?あったかいし、それにこんな可愛い女の子と寝れるなんて幸せすぎるよ?」
本当は彼氏になりたいんだけど、無職童貞の僕じゃ、これで精一杯。
「チョロ松くんは、優しいね」
布団の中で小さな手が僕の服の袖を掴む。
その手をそっと手にとって、優しい優しいおまじない。
「大丈夫。安心して?透ちゃんが眠れるまでそばにいるからね?」
にっこりと笑って見せると、とっても安心したように目をゆっくりとつむる透ちゃん。
「チョロ松くん、あったか...い...」
そういってから少ししたらすうっと聞こえる小さな寝息。
「透ちゃん?寝ちゃった?」
そうっと片方のあいた手で優しく頭を撫でてみる。
柔らかい髪を撫でながら、小さな声で練習する。
「透ちゃん、僕の彼女になって下さい」
言ったら、恥ずかしくなって僕も慌てて布団に潜る。
次の朝に、うんって返事を貰えるのはまた別のお話。
ーみどりいろの安眠枕ー