第10章 それでも貴方が好きでした
「ねぇ、僕って君のなんだろう?」
ポツリと零した貴方の言葉。
クリスマスイブ、冷たい雪がふる、心が冷えていくような言葉が私に突き刺さる。
選んだ別の人との誘いを断って貴方と過した最後のイブ。
心は貴方にあるはずなのに、心の隙間に吹く風は冷たくて悲しかった。
「そんなの、私がききたいよ」
好き放題しても貴方は何も言わず、ただそれを受け止めるだけで私の願った事とは違う。
本当は貴方に怒って欲しかったのだ、自分がいる...と。
ずっと側にいると、だから僕を見てて、どこにも行かないでとそう言って欲しかった。
それを願う事は、罪ですか?
「私、私は、いつまで十四松君を待てばいい?」
願った。
クリスマスの奇跡だなんて信じていない、私が信じていたのは貴方だった。
うつむく貴方は、大きなツリーの下で私に笑った。
「もう、待たなくていいよ」
優しい顔で言ったんだろう。
優しい貴方の事だから。
「他に君を幸せにしてくれる人がいるなら、そっちに行って?」
優しい声だった。
けど、顔は見れなかった。
「そ、そっか。わかった」
私は、笑った。
目をこれでもかっていうほど細めて笑って、くるりと貴方がいた方と別の所を見つめる。
じゃないと泣きそうだった。
胸が痛くて痛くて、息をするのも忘れそうなほど。
いや、いっそ息をする事を忘れてしまいたかった。
吸い込んだ空気が冷たくて胸が痛い。
中から刺されているみたいで、痛くて倒れてしまいそうだ。
消えてしまいたい。
輝くツリーが霞んで見える。
滲むライトが、星みたいにキラキラと切なげに私の目に映った。
けれど貴方の前で泣きたくなかった私は、グイッと涙を袖で痛いほど拭う。
これ以上、貴方を悲しませたくない。
自分のしてきた事の過ちを、貴方のせいにしたくない。
いつの間にか酷い女になったものだと、自分を蔑みながら。
神様は私に貴方を手放せと後押ししているんだと、思った。
綺麗なものに私みたいな身勝手な女が触れていいはずなかったんだと、自分に言い聞かせた。