第10章 それでも貴方が好きでした
長く、穏やかな日々がすぎていった。
貴方は笑ってた。何気ない私との日々を、本当に幸せだと笑ってくれた。
太陽みたいに暖かくて、優しい光は私には心地よくて。
何を考えてるのかわかりずらい摩訶不思議な人だけれど、人の心に寄り添うようにいつも隣に居てくれる人だった。
けれど私の大学の卒業が近づき、事が起きる。
気の迷いだった。
就職活動にインターンシップ、受験勉強よりももっと重いプレッシャーに耐える日々。
いくつも会社を受けてみたが、内定は貰えずお祈りメールと手紙がこれでもかというほど届く。
不採用の封筒が届く度、まさにこれこそ不幸の手紙だと何度も肩を落とした。
そんなに焦る私の傍らで、ニートとして生きる貴方。
将来性もない、私はこんなにも頑張っているのに貴方はどうして頑張らないの?
私とどうなりたいのだろうと、私は急くようになる。明日が来るのが怖くて怖くてたまらない日々に終止符を打ちたくて、結婚したいと願った。
けれど早く結婚したいと急く私は、ニートの貴方には荷が重すぎる。
そう、勝手に思った。
手を伸ばした別の男の人は、将来性のある人。
けれど、好きとはまた別の人。
結婚しようなんて、、貴方は言ってくれなかったしと貴方に難癖をつけた。
ただ好きだよと笑って、それしか言ってくれない貴方が悪いのだと決めつけた。
本当は、貴方が私を支えていけるだろうかと悩んで口にしなかった事を私は知っていたはずなのに。
貴方はなにも言わなかった。
私が何をしても、別の人といても。
貴方はただ私の横で笑うだけで、私もまた貴方の横で笑うだけで。
けれど、穏やかに過ごしていた日々よりも貴方の笑顔は寂しげになっていった。
全てを許してしまう貴方、本当は許してなど欲しくない私。
お互いの時間がずれていった、お互いの気持ちがずれていった。
少しずつ少しずつずれて。
しまいに私は自分の気持ちを濁した。
私が好きなのは別の人なんだ、貴方じゃない。
もう貴方を想うことが辛くてたまらない。
貴方を想えた時間を私は苦しい思い出にかえていった。