• テキストサイズ

【おそ松さん】貴女と愉快な六つ子たち

第10章 それでも貴方が好きでした



「んー、でもやっぱりここにいるよ」

きっぱりとそう言われて、逆に面食らってしまう。
そんな答えがかえってくるなんて思ってもなかったからだ。

「えと、あれなんだよ?男の人は座ってていいの、私が全部するから」

昔ながらの考えだと自分でも呆れてくるが、自分の家では母がずっとそうしていた。
なんだったら、これは親の教えで、男の人を家で働かせてはダメだと教えこまれていたのだ。

よくわからないけど、それが私の普通だった。
それなのにそれとは違う異質な状態に、戸惑いを隠せなかったのだ。

「男とか関係ないよ?」

不思議そうに私を見るその瞳に、私は何も言えなくなった。

「僕、君を手伝いたい。だから、手伝える事ができるまで待ってる」

優しい顔で貴方はそう言う。
玉ねぎを切っているわけでもないのに、何故だか涙が出てきて、止まらなかった。

何かを許されたかのような気持ちになって、ただぼうっと貴方を見つめる私は変な人。

「あれ?なんで泣くの?僕変な事言ったかな?ごめんね?」

心配そうにのぞき込む貴方が、たまらなく愛しいと思った。

愛しいと思って、涙が出た。

そんな事は初めてで、たとえようのない気持ちに身体が勝手に答えたんだろう。

「ありがとう、ありがとうね、十四松くん」

黄色いパーカーの袖が私の涙をすくった。
不思議そうに、心配そうに見つめる貴方が、その暖かい手がたまらなく好きだと、愛しいとそう思えばまた何故だか泣きたくなる。

グズグズとなる鼻、じゃあこれをお願いしようかなと笑えば嬉しそうに貴方は笑う。

「まかせて!」

貴方は笑った。
私も笑ってた。

けど、そんな愛しい貴方はもういない。
/ 160ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp