第8章 どうか無いものねだりでも
〜主人公side〜
身体がビクビクと震えて、柔らかいベッドがそれを支える。
頭からつま先まで駆け巡った快感は、私の熱を冷ますことは無くて。
達した後の脱力感と、まだ物足りないと思う気持ちが行為を急かす。
どろどろになった私のソコに、一松くんの指が入る。
達してすぐの為か、敏感になりすぎた膣内は、ぎゅうっと彼の細い指を締め付け離さないとでも言っているようで恥ずかしい。
「...ねぇ」
彼の低い声が、耳に流れ込む。
「...誰がイっていいっていったの?」
「え?あっ、やぁっ!!」
にやっと笑った一松くんの指が角度をかえ、膣内の壁を優しくなぞる。ジワリジワリやってくる快感は優しくて、けれど確かに私に次の絶頂へとおいやる。
「...大丈夫?」
あぁ、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてなんてちぐはぐな事をするんだろう。
昔から変わらないやりくち、辛そうにすれば大丈夫なんていって私の快楽を上昇させていく。
昔のやりくちといっても、当時中学生だった彼はとんでもないテクニシャンだったわけではない。本当に心配してそう言ってくれていた。
けれど、今になって思い出してみればその心配さえも焦れったいほどに彼が欲しかった。
違うの、そうじゃないの、お願い私を無茶苦茶にして下さいなんて言えなかった。
けど、今は違う。
彼のちぐはぐな行動。
わざとだ、わざとでしょう?
そうやって心配した言葉を吐くのは...。
「...焦らさないで」
「なにを?」
「お願い」
この行為に愛があって欲しいとか、そんな淡い期待を何度も打ち砕く。
彼にとっても私にとってもこれがきっと最後だろう。
それでもいいの、ただ彼が欲しい。
「一松くんを下さい」
今日は泣いてばかりだ。
視界が揺れに揺れて、彼の顔が見えない。
しまいには頬につたって、私のそこもグチャグチャで、きっと泣いているのだ。
彼が欲しい。
一松くんが欲しい。
欲しい欲しいと泣いている。
身体中の水分がなくなっても、むせび泣く私はないものねだりだ。