第8章 どうか無いものねだりでも
右に左に上に下に、焦らされるように膣内をかき混ぜられる。
おねだりの効果はなかったのか、彼はただ無言で私のいい所をかき回す。
漏れる吐息は甘くて、ただの指一本でいいようにされてしまう自分がたまらなく恥ずかしい。
熱がひかないのは私だけだろうか、そう思い彼の腕を掴む。
力の入らない手でも簡単に止めれてしまった行為に、少し首を傾げれば瞳にうつる赤い耳。
「...どうして、そんな事いうの」
響いた声は少し震えているようで、ふやけてしまった脳を元に戻すには充分だ。
嫌だったろうか。
不安になればなるほど、一松くんの顔を見たいが彼は完全にそっぽを向いていてこちらからは見えない。
「...いや、だっ..」
「嫌なわけない!」
言い終わらないうちに言葉を遮られて、指の動きがさらに速さをます。
的確に私の弱い所を狙うかのように、彼は私の秘豆に指を這わせて愛液と絡める。
甘い痺れをもっと感じたくて、自然に足に力が入れば快楽の海へ突き落とされる。
けれど彼が何を考えているのか知りたくて、伸ばす腕。
「なんで...あっ、いれてくれな、あっん...んんんっ!いれ...て?」
そう言った瞬間、ピタリと動きが止まり快楽を掴み損ねた。
「...そんな事言われたら、我慢とかできなくなるんだけど」
抜かれた指からつうっと透明な糸がひいて、それをそのままぺろりと一舐めする。
その行動に思わず唾をごくりと飲む。
言葉が見つからない。
けだるげな瞳がきらりと光ってみえる、淡い照明が、行為のためにはだけたバスローブが、一松くんをより色っぽく見せる。
けれど、その目は優しげで、困ったようで、猫を見る時の目に似ている。
「久しぶりだし、傷つけたくなかったから慣らしてあげようと思ったのに」
どこから出したのか避妊具を持ち出し、その端をパクリと口に含みビリっと破いていく様はいやらしくて。
「煽った透が悪いから、痛くても我慢してね」
ニヤリと笑った顔は、まさに悪魔の微笑みとでもいうんだろう。
でも、泣いているように見えるのはどうしてだろう?