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【おそ松さん】貴女と愉快な六つ子たち

第7章 貴方の一番になりたい



落ち葉がはらはらと舞った。
黄色、オレンジ、そして赤。

ボロくなっている木製のベンチの上で、ふうっと息を吐き出せば、白い煙が落ち葉の中に紛れ込む。

「おそ松兄さん」

名前をよばれ顔を上げれば、見知った顔が俺に笑いかける。

ああこの記憶は、確実にあの日だ。
俺は今病室にいるはずで、怪我だってしているはずなのに手に巻きついているはずの白が見えない。

最悪...。

「隣いい?」

「ダメ」

「なんで?冷たいな、おそ松兄さんたら」

そんな会話をしながら、はいこれならいいでしょと渡される缶コーヒーは暖かい。

ふわりと揺れるスカートは白で、俺の横に座った瞬間甘い香りがした。
長年一緒にいるからかもしんないけど、安心する香りだ。

少し冷たい風が、ゆっくりと体温をさらっていく。
手の中の缶コーヒーが自分で早く温まれとでも言いたそうに、手のひらをじんわりと温めていく。

かこんと音を立てた缶からふんわりとコーヒーの香りが透の匂いをかき消す。

「あっ、みておそ松兄さん、電車!」

透の指さす方向を見ると、小さな男の子がダンボールに書かれた電車で遊んでいる。

「なつかしいね」

こくんとコーヒーを飲んで両手で包み込み、前に屈みながら柔らかい笑みをこぼす。

透を黙って見つめながら、渡されたコーヒーを握り締める。
暖かいコーヒーが自分の温度で少しずつぬるくなるのを感じながら、この1分1秒を目に焼き付けた。


真っ直ぐに見つめる先、なつかしいという言葉。
何年も一緒にいるのだから、考えている事なんてわかっていた。

「昔さ、おそ松兄さん私だけ電車に乗せてくれたでしょう?」

「あったっけ?そんな事」

にかっと笑って嘘をついた。
そんな俺に少し悲しげに笑いかける顔に、ズキリと痛む胸。

あの頃はダンボールの電車で、どこまでも行けるだろうと本気で思っていた。
透と一緒に...。

そんな優しい馬鹿な思い出を、覚えてるよ、もちろんだ、なんてただの妹だったならきっと言えたんだろうな...。
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