第7章 貴方の一番になりたい
「あァァあ!!ひーまーァァ!!」
意味もなく呟いた名前をかき消すように叫んでみる。
幸い看護師さんがそばにいない為怒られなくてすんだ。
カラ松に言ったことと正反対な事を叫んだと同時に、ぼすんとベットに勢いよく落ちた手が激痛にさいなまれた。
「いってぇ!!」
じんじんと痛む利き手にうっすらと苛立ちをおぼえながら、反対側の手で目を隠す。
視界から天井の白が消え去って、指の隙間からもれる光が視界をほんのり赤くみせる。
あの日の落ち葉みたいに、優しい色だ。
けれど俺にとってそれは、切なくて哀しい色。
「...透」
もう冬なのに、蚊でも鳴くような声。
蚊と同じでなんてわずらわしい音だろう。
けれど、その名前を呼ばずにはいられない。
何もかも考えたくなくて、それなのに無意識で考えてしまうことに嫌気がさす。
「あー、もう寝よ!」
こんな時は寝るに限る。
それが一番いい。
俺はそのままゆっくりと目をつむった。
あの日を思いださないように...。