第7章 貴方の一番になりたい
「本当にどいつもこいつも、家の兄弟は馬鹿ばっかりで嫌になっちゃうよ。妹の結婚式だっていうのに...」
本当にそうだよね。
なんてポツリと心の奥深くで思えば、自然と下がってくる眉。
チクリと痛むこの胸は、馬鹿の二文字だけで一人の兄を思わせる。
「チョロ松兄さん!」
私の表情にいち早く気づいたのか、トドにぃがチョロにぃを睨む。
「あ...」
言葉を何処へ置き忘れたのか、本当にそんな感じでチョロにぃの眉は下がって口のへの文字がいつもより深く刻まれてく。
そんなに心配しなくたって大丈夫なのに...。
「チョロにぃ、そんなに私がいなくなるの寂しいの?」
「...へ?」
「だって、悲しそうな顔してる」
違うよね?
そんな事は百も承知。
でも、最後くらい大切な兄達にそんな顔させたくない。
「うん、寂しいよ」
それを察したのかそれとも本心なのか、あるいはどちらもなのかチョロにぃは困ったように笑う。
「僕も本当は寂しいよ?」
トドにぃの大きな黒目が少し揺らいで、いつもなら我が兄ながらあざといなんて思うのに今日はどうやら違うみたい。
「うん...ありがとう」
そっと目を瞑ってありがとうに重みをもたせて、口に出す。
そしたらなんだかありがとうという言葉がさよならを思わせるみたいで、胸が痛い。
「ほら、そんな悲しい顔しちゃダメだよ」
それに気づいたのかチョロにぃが優しく私の頭を撫でてくれて、そうかと思えば真後ろに温かい体温と太陽の香り。
「お布団はちゃんとたたんできたよ!だから、だから安心してね!」
十四松にぃ、いつの間にいたのだなんて、いつもなら言えるのに今日はそんな言葉で水を指したくない。
「もー、十四松兄さん布団畳んできただけなのに髪グッシャグシャになってる」
笑う声に涙声が混ざるトドにぃ、今日という日はおめでたいはずなのにどうしてこんなに胸が痛いんだろう。