第7章 貴方の一番になりたい
「けっ、全くどいつもこいつも感傷に浸りすぎ、意味わかんない」
いつの間にか居間の隅っこで三角座りをしながら、じーっとこちらを見つめる影が一つ。
「いちにぃ?」
じとっとした目をしながらこちらを睨むいちにぃ、実はこんなことを言ってるけど一番結婚に反対していたという事は暗黙の了解でふせられてる。
「なんで嫁になんか出さなくちゃいけないの!?透はずっと僕らとくらすんだ!」
そう言って駄々をこねていたらしい。
おもにエスパーニャンコがそういって暴れてたって、こっそりチョロにぃが教えてくれた。
「いちにぃ?」
「...なに」
そんないちにぃだ、もちろん今日のご機嫌はいうまでもなく最悪。
「いちにぃは、私がいなくなって寂しくない?」
「何言っちゃってんの?妹の一人や二人いなくなった所でなにも変わらないし、寂しいわけない」
私と目線を合わせないようにしながら、そっぽを向いて素直でないうちの四男は相変わらず猫そのものだ。
こういう時は、いつだって先に私が素直になるしかなくて。
「ねぇ?いちにぃ?私いちにぃと離れちゃうの寂しいな?」
そう言った瞬間、ばっとこちらを向いていつも怠そうにしてる目をかっと開いて口をパクパクさせる。
「いちにぃ?私いちにぃが大好き」
「!!そ、そんなの!そんならなんで!!」
ばっと立ち上がって歯をギリギリさせた後、出ていってしまういちにぃ。
「あーあ、一松兄さんももっと素直になればいいのにね」
呆れながらそう言ったトドにぃに私はクスリと笑う。
「仕方ないよ、いちにぃは素直じゃない人だから、でもね?ほら?」
ずっと持ってたのかくしゃくしゃになった封筒が、床に落ちてて。
ご祝儀袋って小さい字と一緒に、猫の足型がついてた。