第7章 貴方の一番になりたい
「冗談だじょ?」
やっぱりなに考えてんのかわかんないや、ハタ坊。
ドタバタ音をたててかっこ悪く走りだす。
カランコロンうるさい、きっと間違って一松の下駄はいてきちゃったんだな。
頭は冷静だったけど、身体は冷静じゃない。
チョロチョロ動くチョロ松、昔の二つな的な名前を思い出すほど景色が駆け足で変わる。
その先に見つけた後ろ姿。
僕に似てるからって嬉しそうに見せてくれたリュックが見える。
後もう少しだと手を伸ばす。
「透ちゃ....ぎゃあっー!!」
名前を呼ぼうとした瞬間だった。
何故か穴があって、何故かそこにはまって、何故か落ちてくこのお笑いネタの図式。
つくづくついてないなんて思いながら、穴の中へ吸い飲まれてく瞬間だった。
「チョロ松!」
おっきい声とともに腕をおもいきり掴まれる。
「透ちゃん!」
「なにしてんの!?馬鹿なの!?なんでマンホールにはまってんの!」
酷い顔、涙と鼻水まみれでぐっちゃぐちゃになりながら、僕の腕を一生懸命掴んで引き上げようとする。
「透ちゃん!危ない!透ちゃんまで落ちるから!」
「やだやだやだ!チョロ松!」
ずるずると穴の中に僕は吸い込まれていく、顔を真っ赤にして必死の透ちゃん、こんな時も助けられて情けないったらない。
「いいから離せよ!僕の事なんていいから!」
「嫌に決まってんでしょ!バカァァ!!」
透ちゃんが叫んだ瞬間だった。
「どっせえええぇぇえい!!!」
聞きなれた雄叫びと共に僕は空中に引っ張り出され、その数秒後ゴキリと危険な音がした。
「ぎ、ぎゃぁぁあぁあぁ!!!」
音と共に僕の口から断末魔が飛び出し、ぶくぶくと口から泡が湧き出す。
かすかに僕の名前を呼ぶ透ちゃんの声。
「あっはは!これはきゅーきゅーしゃいるね!」
と明るい声で笑う自分の弟。
その後の事はあんまり覚えてない。