第13章 独占欲×独占欲
「昔の自分をリセットしたいんだ。でもどれだけ気をつけてても、ちょっとした弾みですぐボロが出る。…君がいなくなってから、僕たちけっこう荒れたんだよね。大人になってからは真面目に生きようと努力してはいるんだけど…やっぱり難しいな」
私がいた時からすでに荒れまくりだった気がするんだけど、さらに?!つまり不良だったのかしら…
彼の話を聞いて納得した。今彼は、学生時代に培ったドS暴君な性格と、変わりたいと願う心優しさの狭間で揺れ動いているのね。
…それにしても、ちょっとした弾みどころでしょっちゅうあんな怖い顔でドSプレイされたら心臓が保たないわよ!なんとか早めに改善してほしいわ…
ブシュッ
「?なに……きゃっ!」バシャンッ「ちゃん!?」
変な音がして後ろを振り返ると、髪と顔に思いっきり水がかかった。
「つ、冷た…!いきなりなんなの!」
よく見ると、噴水の一部が壊れているらしく、水の出が悪いのか音を立てながら不規則に出たり引っ込んだりしていた。
うわぁ、最悪…よりによって私の真後ろって。
「だ、大丈夫?!けっこう濡れてるよ!」
「平気平気…あ、でも化粧崩れちゃうからあまり見ないでくれると…」
助かる、と言いかけたその時、私の頭にふわっとした何かが掛けられた。
「…え?タオル?」
手に取って確認すると、それはフェイスタオルだった。ただし、普通のタオルではなく…
「¨にゃーちゃん激推し¨…?」
Σ「わぁぁッ!?///よ、読み上げなくていいから!!」
横でチョロ松が叫ぶ。ああ、なるほど。これってあの地下アイドルのライブグッズなわけね。
「あ、あのそれ、まだ未使用だから!デザインが嫌だったら裏返しにしてもいいし!ぼ、僕見えないように後ろ向いてるね!」
すごくテンパってる…そんなの気にしないのに。
「ふふ、ありがとうチョロ松。使ったら洗って返すわ」
「///あ……えっと、う、うん…」
…なんだか胸がぽかぽかする。
濡れてしまったのが不快だったはずなのに、むしろ彼の優しさに触れるきっかけになったみたいで嬉しい。
やっぱり私は…優しい彼らが大好きなんだ。
***