第11章 長男様には敵わない※
…は!ま、まさかこいつ!
「私にそれをねだるために、わざとあいつらをけしかけたんじゃないでしょうね?!」
これまでの悪行を顧みるに、十分可能性はある!
…けれど、それを聞いたおそ松くんは、寂しげな表情を浮かべて苦笑した。
「…あー…君って本当に、俺らのこと嫌いなのなー。…ま、無理もないか」
「え…違うの?」
「違う違う。疑う気持ちも分からなくはないんだけどさ、さすがにそんな汚い真似はしないよ?もう君を傷付ける気はこれっぽっちもないんだからさ」
「…っあ……」
後悔する。…私、彼に酷いことを言ってしまった。
昔の彼らならやってもおかしくはない。でも実際、彼らはあの頃とは違う。
クズだし変態だしどうしようもないバカだけど…私を傷付けようとする意思は、再会してからは誰からも感じられなかった。
それに、みんなが私を好きなのはきっと本当のことで…企みがあったとはいえ、彼らは私に嘘はついていない。
何より、だ。
助けてもらったくせに人を疑うなんて…最低だ、私。
複雑な想いが一気に胸の奥から込み上げてきて、泣きそうになる。涙を見せたくなくて、私は彼の胸に顔を埋めた。
「…?」
「…ごめんなさい。さっきのは撤回します。本当にごめんなさい…」
「!」
…今、分かった。この違和感がなんなのか。
彼に対して、じゃない。
彼らに抱く私の気持ちが…変わりつつある。多分そう。
再会してから、かつての復讐と題して彼らを散々な目に遭わせてきた。
いくら仕返しとはいえ、酷いこと、たくさんしてきたのに…
¨恩を仇で返す嫌な女¨だと、彼に思われたくない自分がいる。
嫌われたくない、と…思ってしまっている。
あ、だめ、やっぱり泣きそう…わけわかんないよ、もう…
「…ほんと俺、気にしてないからさ。…そろそろいい?」
「…え?」
「そうやってしがみつかれてんのすっげー可愛いから、離したくねぇんだけど…」
あ…そっか。彼のしたいことをさせてあげるんだっけ。
「…ん、いいよ。何?」
「え、マジ?いいの?」
「ひ、一つだけよ。それに今回限りのサービス」