第11章 長男様には敵わない※
彼らに背中を向けた、その時。
「くそッ…てめぇ待ちやがれ!」
「きゃっ!?」
諦めたと思っていた残りの二人が再び立ち上がり、背後から私に飛び掛かってきた。
「ちょっ、離しなさいよ!」
「うるせぇ!いいからこっちに来い!!」
詰めが甘かったわ…こいつらも痛めつけとくんだった!
二人がかりで体を拘束され、無理やり人目につかない路地裏まで連れてかれる。大声を上げようにも、周囲には人っ子1人見当たらない。叫ぶだけ無駄だ。
壁に強い力で押し付けられると、1人が私の前髪を掴んで顔を引っ張り上げた。
「く…ッ」
「可愛い顔して、やることえげつないよなぁ?…ムカついたから、今ここで犯してやるよ」
こんな状況下でも、私は比較的冷静に頭を働かせる。
どうすればいい?対6つ子用に仕込んでおいたナイフで脅すか、キスされようものなら舌を思いっきり噛んでやるか、隙を見て二人の急所を…
そこまで考え、なんでもいいから実行に移そうとした時、
聞き覚えのある声が、辺りに響いた。
「はいはーい、そこまで〜。俺の¨彼女¨に何しようとしてんのかな〜?」
「…!?」「な…!」
現れたのは、赤いパーカーを着た彼。
「お、おそ松くん?!」
「探したよー。で、そいつら誰?友達?」
ゆっくりと歩み寄ってくる彼は、確かにあのおそ松くん。
しかし、笑っているのは口元だけ。その鋭ささえ感じる眼光は、私ではなく二人の男を射抜いていた。
…心臓が、ドキリと大きな音を立てる。
「と、友達なわけ…」
「あー、うん。だよね〜。聞いてみただけ」
「おい!それ以上近寄んじゃねぇよ!」
おそ松くんの醸し出す、どこかおぞましい雰囲気に怯えているのか、男たちは震えながら彼を牽制する。
…でも、むしろ逆効果だった。
「何言ってんの〜、どっちかってーとそれ俺の台詞じゃん。
…に触んなよ」
「「!?ヒィィッ!!」」
彼の一睨みがよほど効いたのか、情けない悲鳴を上げて男たちは逃げていってしまった。
「………」ぽかん
う、嘘…手を出すまでもなく、撃退しちゃった…