第9章 松野トド松という男
トド松くんに誘われるままやってきたのは、彼の行き付けらしいファミレスだった。
ふむ…店は普通ね。よくある感じの。
「ちゃん、何頼む?もちろん僕の奢りだから、なんでも遠慮せず頼んでよ♪」
ん?なんでも?ほー、なんでも。
私はにっこりと微笑み、メニュー表を彼に突き付けた。
「うーんと、じゃあー…この端から端まで、全部にしようかな☆」Σ「ごふッ!?(吐血)い、いや、さすがにそれは…」
ふふ、困ってる困ってる。
「なんでもって言ったよね?」「だ、大体君、そんなに食べられないでしょ!」「食べられるか食べられないかはこの際関係ないんだよ」「どんな理屈!?」
トド松くん、面白いなぁ。律儀にツッコミしてくれるし、こっちの方が素なのかも。
「冗談よ。そうね…お昼は食べてあるから、このアップルティーだけでいいわ」
「そ、そう?…助かった…」
店員を呼び、彼が二人分の注文を済ませる(ちなみにトド松くんはタピオカミルクティー。女子か!)。
「それにしてもさ、本当に久しぶりだよねちゃん。元気にしてた?」
少し身を乗り出しがちに両肘をテーブルにつき、女の子ポーズで尋ねてくる彼。
澄んだ大きな瞳といい、アヒル口といい、なんなのでしょうこのあざとさ。
服装も流行りモノでお洒落だし、男なのに肌キレイだし…6つ子の中で一番¨っぽくない¨感じだなぁ。
「…うん。みんなから離れて清々したもん。元気だったに決まってるでしょ」
「またまた、強がっちゃって♪寂しかったって素直に言ってもいいのに」
「そっ、そんなのこれっぽっちも思ったことありませんから!///」
「ふふ、まぁ素直じゃない君も可愛いからいいけどね♪」
あ、あれ?いつの間にか立場逆転してる?私トド松くんにからかわれてるよね?!
この笑顔…他の兄弟の誰とも違う。可愛くて純粋そうなのは表の顔、絶対とんでもない裏があるに違いない!
警戒を怠らないように、神経を研ぎ澄ませておかなきゃ!