第9章 松野トド松という男
だらだらと冷や汗が流れ落ちる。我ながら言い訳が苦しすぎるよ!
「あ、そうだ。いいこと教えてあげるね」
「は、はい?」
「うち今誰もいないから、¨やるだけ無駄¨だよ☆」
ば、バレてた…!ですよね!!
私はため息をついて武器を下ろし、臨戦態勢を解いた。
改めて彼に向き直る。
「トド松くん…よね」
「うん、そうだよ」
「本当に誰もいないの?」
「僕が信じられない?なんなら家に入って確かめてもいいよ」
「…分かった、もういいわ」
彼は嘘をついていない。この自信に満ち溢れるオーラがそれを物語っていた。
最後の最後、末っ子にして大ボス登場ってところかしら。でも私にはまともにやり合う義理はない。
「悪いけど、あなたと話すことは何もないわ。それじゃ」
横を通り過ぎようとすると、彼が手を伸ばして私の腕を掴む。
「待って。よければ一緒にお茶でもどう?」
「…ナンパなら他を当たってもらえる?」
「君が戻ってきてくれたなら、他の女の子には興味ないよ。…ね、お願い」
「……」
どうする、私。
あえて付いていって、彼の出方を窺うのもアリかしら?一応護身用にいくつか武器も仕込んでるから、いざという時には対応できるはず。
これまでの兄弟みたいに下心全開だったらぶっ殺、そうでなくてもぶっ殺、つまりぶっ殺。うん、方針は決まったわね♪
「いいわ。ただしその前に、この波動砲をなんとかしたいんだけど」
「ああ、うちに置いておきなよ。兄さんたちパチンコやら競馬やらで当分帰ってこないから、いじられる心配もないしさ」
……怪しいなぁ。
「あ、その目。また僕を疑ってるの?どうすれば信じてもらえるのかなー」
「悪いけどあんたたちのことなんて金輪際信用しないから!」
「…へぇ?それって、兄さんたちが揃いも揃って救いようのないクズだったから?」
「そうよ!トド松くんだって同類でしょ!」
「心外だなぁ。僕をあんなクソみたいな奴らと一緒にしないでよ。…僕は君を心配してるんだよ?」