第7章 松野一松という男
音がした方向は浴室だった。急いで向かう。
嘘、そんなはずは…だってここは2階、いくらなんでも普通はそんな真似…
バンッ!
「にゃ〜」
浴槽の縁に、紫のパーカーを着た巨大な猫…のような謎の生物。
………
「きっ
きゃぁぁぁあーーーッ!!!!!」
Σ「ふぎゃッ!?」
なになになになになんなのこのクリーチャーは!?よく見ると人間っぽいけどいや猫なのどっちっていうかとにかく怖すぎる!!!
!そ、そうだ、不法侵入に変わりはないんだから、さっさと消し炭にしておこう!バズーカ、バズーカは…
ない!!玄関に置いてきちゃったぁぁぁ!!!絶体絶命!!!
「………」のそり
そうこうしてる間に、目の前の半猫半人はゆっくりと私に近付いてくる。
「…い、いや…来ないで…!」
そこらの安っぽいホラー映画や殺人サスペンスドラマより恐怖度半端ない。こっ、殺される…!!
立っていることもままならなくなり、浴室の床に尻餅をつき、死を覚悟して固く目を瞑る。
もう、だめだ…!
………
……
…
あ、れ…?
いつまで経っても何も起こらない。ど、どういうこと…?
ボンッ!「ひゃあっ!?」
突然くぐもった破裂音のような何かが鳴り響き、恐る恐る目を開くと、周囲に白い煙が悶々と立ち込めていた。
煙が徐々に霧散する。そしてその中心から…
「…ヒヒッ。あんたのその恐怖に怯える姿…本当に久しぶり」
「!?」
…悪魔のうちの1人が、怪しげな笑みを浮かべながら現れた。
「…え……な…何が、起こった、の……?」
状況が全く理解できない。え、さっきのクリーチャーは?今の煙何?あと誰!?
「…どうせ俺が誰か分からないんだろ?仕方ないから教えてやるよ」
彼は私と視線を合わせるように屈み、一層口端を引き上げた。
「俺は一松。縁起の悪い四男だよ。…びっくりした?」