第6章 松野チョロ松という男
来た道とは逆方向を全速力で駆け抜ける。
追手は来ていない。撒いたかな?
走りながら振り返る。誰もいない。というかここどこ?全然知らない場所に来ちゃった…
「見つけたぞ!きっと彼女だ!」「囲め囲め!」ザザザザッ
Σ「!?なっ」
だっ、誰この人たち!?いきなり現れたんですけど!?
3人、4人…最終的に6人の謎の青年たちが、私の行く手を塞ぐように四方八方を取り囲む。
「ふふふ…これで念願の生写真がもらえる…!」
「我輩はプレミアムチケット…!」
「拙者はサイン入り写真集…!」
全員にやにやと気持ち悪い笑みを浮かべながら少しずつこちらに迫ってくる。な、何をされるのぉぉぉ!!
「…あぁ、確保まではしなくていいよ。なんとか追い付いたから」
…っ!この声…!
「「「「「「松野氏!!!」」」」」」
男性たちが目を輝かせて一斉に声のした方を向く。
そこには、相変わらず笑顔を浮かべているチョロ松くんがいた。
絶望に打ちひしがれる。彼から逃げてきたはずなのに、まさかこんな結末になるなんて!
…いや、この人たち、さっき松野氏って呼んだよね。まさか知り合い!?
チョロ松くんはゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
「みんな、ありがとう。ご苦労様。約束の品は後日ライブの時に直接渡すよ。ああ最後に…彼女の退路を塞いでてもらえるかな?」
「了解です、松野氏!」「デュフフwwwにゃーちゃんの限定グッズゲットだおwww」
チョロ松くんの号令(?)で男たちは方々に散らばり、私が逃げられないようにあらゆる道を封鎖する。だからなんなのこいつら!
って、今はそんなの気にしてる場合じゃない!また振り出しに戻っちゃったわ!
「先に教えておいてあげるね。君がいくら逃げようとしても、僕の指示一つでまた彼らが邪魔しに来るよ。だからひとまずここは逃げずに、僕の話を聞いてほしいなぁ」