第6章 松野チョロ松という男
…と、意気込んで支度をし、街に出てきたのはいいものの。
どうしよう。宛もなく外出するのなんて初めてだから、どこに行けばいいか悩んでしまうな。
確か6つ子のみんなは無職童貞…あ、いや今童貞は関係ないか。であるからして、多分こういうお洒落な繁華街には無縁な気がするのよね。
お金はギャンブルで稼いだ分があるとはいえ、それを服飾関係に使っているとは考えにくい。さすがに大人になってからはどうか分からないけど、昔はそれこそ服はダースで買ってたからなぁ。
つまり私の推測としては、悪魔たちは絶対こんなところにいない!よし、まずは心置きなくショッピングでもして時間潰そーっと♪
ウキウキしながら辺りの店を覗こうとした、その時。
「ああ、いたいた。ちゃん」
「ん?」
名前を呼ばれて反射的に振り返ると、緑色のチェックシャツにチノパン姿の男性が、私に向かって手を振っていた。
その顔を見て、私の背筋が凍る。
なっ
なんでこんなところに○○松くんが!?(←相変わらず名前分からない)
「あ、逃げようとしても無駄だよ?君の居場所は常にデカパン博士の高性能サーチマシンで追跡把握してるからね。素直に諦めた方が無難かな」
こっ、高性能サーチマシン!?なんなのあの博士、どれだけチートなの、どれだけ6つ子に肩入れしてるの!?
というかそれ一体どんな仕組みなのよ!
「大丈夫、別に君をどうこうしようってわけじゃないんだ。そもそもそんな大胆なこと、僕にはできないしね。だからせめて警戒を解いてくれない?」
「…あなたは誰?何松くん?」
「チョロ松だよ。3日ぶりだね、ちゃん」
ニコっと微笑む彼。これまでの二人と違って、わりと物腰が柔らかく感じる。…ううん、でも油断は禁物よ。どれだけいい人そうに見えても、悪魔の1人であることに変わりはないんだから!