第38章 トド松とハッピーエンド
ずっと気になっていたことをやっと聞けた。なんだか妙に生き生きしてるというか、全身からハッピーオーラが滲み出ているというか。
定職にも就いて、ニートだった頃よりは格段に忙しくなったはずなのに、むしろ今の彼の方がキラキラ輝いて見えるのはなぜだろう…と不思議に思っていた。
「え、僕そんなに嬉しそうに見える?」
「ええ」
「だとしたら、君のおかげかなっ」
「…は?」
彼はバッグからスマホを取り出すと、スケジュールを開いて私に見せてきた。
今日の日付の場所に、ハートマークがついている。ん?何かあったっけ…?
「あ、やっぱり忘れてる。今日は僕らの結婚記念日でしょ?」
「………あぁっ!」
思い出した。去年の今日が、私の姓が¨松野¨に変わった日だということに。
まだ一年目なのに、もう忘れてたなんて…お嫁さん失格かも…
「ご、ごめんなさい…私、誕生日とか記念日とか、国民の祝日とかに疎くてすっかり忘れてたわ…」
「国民の祝日は関係ないと思うけど…謝らなくてもいいよ?ちょっぴり悲しかったけど、僕別に怒ってないし♪」
「そ、そう?」
よかった…こんな特別な日に限って夫婦喧嘩なんてしたくないもの。
「だからさ、今晩二人でディナーでもどう?実は1ヶ月くらい前に、都心にある高級レストラン、予約しておいたんだ☆」
「本当?行く!ありがとう、トド松」
「えへ、どういたしまして♪」
それから先は、彼の女子力なんたらかんたらについてはすっかりどうでもよくなってしまい、他愛ない雑談をしながら午後のゆったりした時間を過ごした。
夜、楽しみだなぁ。高級レストランってどんな場所だろう?トド松はもったいぶって詳しくは教えてくれないし…
でも、彼と行くならどんな場所でも思い出には残るもの。目一杯楽しまなくちゃね!