第37章 十四松とハッピーエンド
「ありがとうございましたーっ!」ガーッ
「やったー!これでまたキャッチボールしようね、!」「ええ、そうね」
一番安いものだけど、古くてボロボロになっていたものの代わりに新しいグローブを買って、ご満悦の十四松。お小遣いの方は大丈夫なのかしら…
「十四松、次はどこに行く?」
「の行きたいところでいいよ!」
あれ、珍しいな。大体いつもはこのまま野球コースになるのに。
「じゃあ、河原とか?今日はいい天気で風も気持ちいいし、涼しいと思うよ」
「うーん…他のとこは?」
「え?えっと、公園にする?」
「他にない?」
「空き地?」
「そういう場所じゃなくて…」
そういう場所じゃない?どういう意味だろう。野球したくないのかな。だってせっかく新しいグローブを買ったのに。
「…あ、あの、」
「うん?」
「僕ね。これからは、君の希望もちゃんと聞いてあげようと思ってるんだ」
「…希望?」
うーん、うーんと唸りながら、必死に言葉を探している様子の彼。急かさずに待っていると、彼はまたゆっくりと語り出した。
「…僕、と付き合い始めてからも、その前からも、ずっと野球野球ばっかり言ってたよね?」
「え…ま、まぁ…でも気にしてないわよ?あなたの趣味に口出しする気はないし、二人でキャッチボールするのは楽しいから」
「で、でも!…彼氏と彼女って、それだけじゃだめだと思うんだ」
「十四松…」
たまに…ほんとにたまにだけれど、キャッチボールをしている最中、彼がいつも笑顔の大きな口を閉じて、切なげな表情を浮かべることがあった。
特に気にしていなかったけれど、もしかしたらあれはサインだったのかもしれない。…彼女なのに、彼の悩みに気付いてあげられてなかったんだな…
確かに、十四松と二人で、いわゆる定番デートスポットみたいな場所に行ってみたくはあるけれど、
野球三昧の毎日も、好きなのにな。好きになれたのは、彼のおかげ。
今にも泣き出しそうな彼の顔を見ていられない。何か言う前に、どうにかして元気づけられる方法は…
あ!