第34章 カラ松とハッピーエンド
そこからはどたばたしていたせいで、あまり記憶がはっきりしていない。
ウェディングなんとかーって感じの名前のお洒落な店に連れてこられ、店内に飾られた大量のウェディングドレスを見て、ようやく事態を察した。
…つまりさっきの男性は、ただの勧誘だったわけで。
こういう店に勧誘も何もない気がするんだけど、閑古鳥だからまぁ苦肉の策なのかしらね。
で、久々の客だからかなんなのか、店員さんはみんなノリノリ。カラ松は別室に引き離され、私は店員のハイテンションさに振り回されながら、ドレスの着せ替え人形にされてしまったわけである。
最初の何着かは私もノリノリだったけど…いい加減解放してほしいわ。多分これで10着は着た気がする…
さすがにもう、いいわよね?
「あ、あのー…」「ええ、どうされました?もしかしてサイズ小さいかしら?」「違うんです、もう私「ああ!彼氏さんに会いたいのね!待ってて、今呼んでくるわ!」バタバタバタ「………」
試着室に1人取り残され、ただ呆然と立ち尽くす私。そうじゃないんだけど…!
はぁ…諦めよう。それにしてもこのドレス、露出度高いわね。最近のウェディングドレスってみんなこれくらい胸元が開いてるのかしら?いやさすがにそれはないか。
…結婚、か。カラ松と正式な恋人同士になってから約一年。お互いいい大人だし、全く意識してなかったわけじゃないけれど…
花嫁姿って、こんな感じなのね。成り行きとはいえ、いい経験かもしれないわ。
「…?」
「あ…カラ松?」
声がしたので振り向くと、僅かに頬を赤らめて私の姿を凝視しているカラ松が、そこに立っていた。
「///…え、えっと、い、いろいろ着せられちゃって…あはは」
「………」
彼は一言も喋らないまま、ただじっと私を見つめてくる。
ど、どうしよう…なんか急に恥ずかしくなってきた…!
「きっ、着替える!///」
空気に耐えられず、咄嗟にカーテンを閉めようと手を伸ばした…
けれど。
パシッ「…!」
その手は、あえなく彼に掴まれてしまった。
「///…っ…すまない」
「え…?」