第30章 君に捧ぐ誓い【カラ松】※
「着いたぞ、!」
舗装された道路を抜け、時には草むらを掻き分け進むこと30分。
視界が開けたと同時に目に飛び込んできたのは、夕焼けで赤く染まる広大な海原だった。その美しさに、思わず息を呑む。
「昔、よくみんなと遊びに来ていたのを思い出したんだ。道に迷ったわりには覚えている風景があって、もしかしたら近いのかもしれないと思ってな。なんとかたどり着いてよかったぜ」
「…海って何年ぶりに見ただろう。すごく綺麗…」
海を眺めているだけで心が洗われていく。ついさっきまでの絶望が、嘘のように消えてなくなってしまった。
「カラ松、少しだけ入ってみる?」
「えっ!?///」
「なんでそこで顔を赤らめるの、脱がないわよ?水着なんて着てきてないんだから。足だけ!」
「あ、そ、そういう意味か…構わないが、この時期まだ水が冷たいと思うぞ」「平気平気」
靴と靴下を脱ぎ、波打ち際で足を水に浸からせてみる。確かに冷たいけど、歩き疲れて火照った体には心地よかった。
「気持ちよさそうだな」「カラ松も入る?」「いや俺は「はい、靴脱いでー」問答無用?!」
都会の喧騒を離れ、誰もいない海岸線を、手を繋いで二人で歩く。
不運続きだった今日のデート。さすがに最後は神様が情けでもかけてくれたのか、ようやくデートらしいデートができたかもしれない。
少し前を行く彼の背中を見つめる。時折振り向いては笑顔を向けてくれる彼が愛しくてたまらない。
鎮まったはずの熱がまた火照りだす。これじゃまるで、本物の恋人同士みたい。
…抱き締めて、ほしいな。
「…カラ松」
呼びかけると、彼が足を止めて振り返った。けれど素直になれなくて、それ以上言葉を紡げずに見つめ合うだけ。
「なんだ?帰りたくなったのか?」
優しい声色で問われるも、私はただ首を横に振る。
ゆっくりと、彼が近付いてくる。やがて彼の瞳に自分が映り込むほどに距離が縮まり、抱き寄せられた。
触れるだけのキスが降りてくる。久しぶりの感覚に、胸が高鳴った。
「…。俺はこれでも焦っているんだ」
「…え…?」