第5章 松野カラ松という男
「…俺は、諦めないぞ」
「!」
あっ、また…
おそ松くんと同じ。彼の纏う空気が変わる。
いつの間にか雨は上がっていた。彼は傘を閉じ、おもむろに私の手を取る。
「こっちに来い」
「えっ、ちょ、カラ松くん?!」
先ほどまでの遠慮がちな彼とは裏腹に、強引に腕を引っ張られる。そして私が先日6つ子に追い詰められた路地裏に辿り着いた。
「やっ…カラ松くん、なんなの?手痛い…!」
「…ああ、すまない」
路地裏の奥まで来て訴えたところで、彼は握り締めていた私の手を離す。
解放されたと安堵したのも束の間、今度は建物の壁に押し付けられた。
ドンッ「きゃっ!」
え、えぇぇ?一体何が起こってるの?!というかこれいつぞやかに流行った壁ドン状態じゃない!実はちょっぴり憧れてたんだ〜♪じゃなくて!!
「ちょ、どいてよ!」
「どいたら君は逃げるだろう?…そんなに嫌なのか」
「い、嫌に決まってるじゃない!…それに近すぎて…は、恥ずかしいし…っ///」
「…ちゃん…」
ふいっと顔を逸らす。しかし彼は左手で私の顎を捉え、再び目が合うように真正面に向けた。
「あまり俺を煽らないでくれないか。…理性が効かなくなる」
「…!///」
低い声で囁かれ、熱っぽい瞳で見つめられた私は思わず身を任せそうに…
「…うッ!!」「へ?」
なる前に、カラ松くんはいきなり自分の鼻を両手で押さえ、素早く後ろに後ずさった。
「だっ、だめだ…もう限界…キャパオーバーだ…!!///」
「は、はぁ?一体何が…え!?」
よく見ると彼の指の隙間から血が滴っている。顔や耳は真っ赤に火照っており、必死に私から目を逸らす彼を見て、1つの可能性に辿り着いた。
…まさか…!
自分の格好を見下ろしてみる。…予想通り、雨に濡れた服は肌にぴっとりと張り付き、下着が透けていた。
「///…〜〜〜〜こ…の………ッ
ド変態ッッッ!!!!!」ドゴォッ!「ボェバァッ!!(2回目)」
必殺の回し蹴りで無力化に成功。殺り足りないけど恥ずかしすぎて死にそうだからさっさと帰る!あーもう、黒歴史増えちゃったじゃない…!