第5章 松野カラ松という男
致し方なく相合い傘をしながら(途中から傘はカラ松くんが持ってる)、歩くこと数分。
胸の内には様々な感情が渦巻いているのか、お互い無言。いやたまにカラ松くんがルー○柴ばりの謎の言語を喋ったりするんだけど意味が分からないから全部スルーしてる。
こんな変な格好してるカラ松くんが悪いとはいえ、さっきは思いっきり不審者扱いしちゃったし…なんか気まずいのよね。
嫌い…なんだから気にしなくていいはずなのにな。昨日のおそ松くんといい、調子狂う…
「…そ、その…ちゃん」
「…な、なに?」
「おとといは悪かった。いや、おとといどころか…謝らなければならないことは数えきれないほどあるな」
「!」
え、もしかしてこの流れ。
カラ松くんも、私を虐めたことを後悔してる?
「昨日、兄貴から何か聞いたか?」
「兄貴…おそ松くん?まぁ…謝られたり、告白されたり…」
「そ、そうか…実はその、俺も、だな…えーっと…」
煮え切らないなぁ…容姿からも性格からも、昔の面影が全然感じられない。
これっていいことなの?後の4人はまだ分からないけれど、彼らの言葉を素直に信じるなら、もう私に危害は加えないつもりらしいし、昔の悪童っぷりは鳴りを潜めたようにも見える。
でもその代わり、
「俺も、あの頃からずっと…君に恋をしていたんだ。ライクじゃない、ラブだぞ!フォーリンラブだ!!」
告白されるようになってしまったのですが…!あといちいち英語使うななんかイラッとくる!
「…はぁ…」「き、聞こえなかったか?ならばもう一度「結構です」アッハイ」
「…もしかしてみんな、私のことを好きなの?だから虐めてたの?」
「!……ああ、そうだ」
突き付けられる無常の現実。あえて言うけど、みんな揃いも揃って愛情表現下手すぎじゃないかな。
虐めがなかったら…彼らがいつも優しかったら、私だって
誰かに恋をしていたかもしれないのに。
「…今さら想いを告げられても応えられないわよ」
「恋人がいるのか?」
「そういう意味じゃなくて…」