第29章 溺れる心【おそ松】※
ふかふかのベッドに横になりながら、シャワーを浴びている彼を待つ。
い、いくらお金があるからって、何もこんな高級そうなホテルに来なくてもよかったのに。
今まで使ったどのホテルよりも内装が豪華で、緊張が増してしまう。彼は浮かれてたけど。
つい…二つ返事でOKしてしまった。我ながら呆れてしまう。
でも、まだ一緒にいたい気持ちは私も同じだったし、決してその場の雰囲気に流されたわけではない…はず。
明日の仕事に響くかな、なんて悩みながらも、結局は胸の高鳴りを押さえきれない。早く彼に触れられたくてうずうずしてる。
私、いつからこんな女になったのかしら…復讐するためだけにこの街に帰ってきたのに、これじゃまるで…
「…〜〜〜っ!///」ぼふっ
恥ずかしさのあまり枕に顔を埋めたのと、浴室の扉が開いたのはほぼ同時だった。
ガチャ「待たせたなー…って何やってんの?」
「…あ…おそ松…」
枕から僅かに顔を上げ、声のした方を向くと、不思議そうに私を見下ろしているバスローブ姿の彼と目が合った。
彼はベッドの縁に腰掛けると、私の髪を鋤くように優しく撫でてくる。
「もしかして眠い?」「う、ううん…」「まぁ仮に寝てても襲うけどね」「な…っ///」「冗談だよじょーだんー」
ケラケラと笑う彼を見て、なんともいえない気持ちになる。普段ならイラッとするはずなのに、今は笑われることさえも愛しく感じた。
私はゆっくり体を起こし、彼と向かい合わせになるように座り直す。
「?」
「あのね、おそ松。1つだけ確認したいことがあるの」
「んー…それ、今聞かなきゃいけない?」
「大事なお話ですので」
「別れ話!?」「まだ恋人同士じゃないわよ」「じゃ逆プロポーズ?それなら俺大歓迎♪」「ちょっと黙ってなさい」「へいへーい」
彼のおふざけに付き合っているとキリがないので一旦黙らせ、私はようやく切り出した。
「おそ松は…私のことが好きなのよね?」
「え、そこから?!俺これまで君に散々愛を囁いてきたじゃん〜、もう忘れちゃった?っていうかもしかして伝わってなかったり?だとしたらショックだよ俺〜」