第29章 溺れる心【おそ松】※
いつまでも渋るおそ松に痺れを切らした私は、彼から財布をひったくると中から数枚の諭吉を取り出し、テーブルに叩きつけた。
バンッ「はい!これでいいわね」「ちょ!?俺そこまで食ってないよ?!」「毎回ツケにしてるんだから、少しくらい多くたってバチは当たらないわ。いいから帰るわよ!」
そしてわたしは、ぶーぶーと口を尖らせて不満そうなおそ松を引きずりながら、屋台を後にした。
***
「、君こんな夜中までバイトやってたの?」
松野家までの道のりを歩きながら、ふと彼がそんなことを尋ねてきた。
「ええ、そうよ。早朝からだったり夕方だったり、時間はけっこうランダムなのよね」
「ふぅん。大変なんだなー」
「そういうおそ松は、いつになったら働くつもり?」
「え?俺一生ニート貫くよ?」「うわぁ…」
聞いた私がバカだった。どうぞお好きにしてください…
「…けど、まぁ」
「?」
「もし君が俺のお嫁さんになってくれるなら、働いてもいいかなーとは思ってる」
「え…っ!?///」
お、おお、お嫁さん!?話が飛躍しすぎじゃない?!
「あ、あの…本気で言ってるの…?」
「え?プロポーズのがよかった?」「どうしてそうなるのよ!///」
…は!これはもしや私、またからかわれてる?!
だとしても時すでに遅し。私の頬は尋常じゃないほど熱を持ち、胸の鼓動は高鳴っており、明らかに冷静さを失ってしまっていた。
な、なんなのよ、もう…さっきのキスといい、今の台詞といい、今日のおそ松は何か変だわ…!///
「……なぁ。さっき財布見たから分かってると思うけど、俺まだ金あるんだよね」
「…?そ、それがなに?」
立ち止まり、彼は私と視線を合わせる。
…口元に僅かな笑みを讃えながら。
「俺、まだ帰りたくないんだよな〜。…だからさ
もう少し、君と一緒にいたいんだけど…駄目?」
「…!」
その¨誘い¨が何を意味するのかはすぐに分かった。
…薄々、勘付いてはいた。このまま素直に家に帰れるわけがないと。
それどころか、もしかしたら、
期待すら…していたのかもしれない…―
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