第29章 溺れる心【おそ松】※

見事な狸寝入りだったわ…！まさか騙されてたなんて！


怒りが込み上げてきて本気で一発殴ってやろうとしたが、拳に力が入らない。多分今のキスのせいだろう。ふ、不覚…！


「まぁまぁ、そんなに怒るなよ〜。だってこうでもしないと、せっかく来てくれたのに君、帰っちゃってたかもしんないだろー？」


「あ、当たり前でしょ！もう、どんな気持ちで一緒にいてあげたと思ってるの！」「どんな気持ち？」「う！そ、それは…///」


酔ってるはずなのに、なんでこんなに口達者なの…！呂律も回ってるし、なんだかムカつく！


「おそ松、飲んでたんじゃないの？」


「飲んでたけど？実はさー、昼間パチで大金稼いじゃったんだよねぇ。あいつらにバレる前に、ここでパーッと使おうとしたら、ビール瓶３本も空けちゃってさぁ。さすがに飲み過ぎたかなーって思ってたら、いつの間にか寝てたみたい。なはは♪」


酒豪…ここに酒豪がおる…！


「それでよくまぁ、ぴんぴんしていられるわね…」「これでも酔ってるよぉ？寝たらほとんど醒めただけー」「あ、そう…」


彼がバカみたいにお酒に強いことは分かった。問題は別にある。


「さっきのキスはなに？」


わざと低い声で問い質すと、彼は全く悪びれていない様子で一言。


「したかったから♪」「あ、あんたねぇ…！///」


もう我慢ならない、と振り上げた拳を、彼は軽々と空中でキャッチする。まるで私の反応は全て予測済みだとでもいうような、無駄のない動きだった。


「…っほんと、酔っ払いのくせにどうしてそんな素早い動きができるのよ…！」


「その酔っ払いが心配だったんだろ？。そういう優しくて他人想いなとこ、俺大好きだよ〜？」「///かっ、からかわないで…！」


いけない、このままじゃどんどん彼のペースに巻き込まれてしまう。なんとか話を逸らして、家に帰らせないと…！


私は掴まれていた手を振りほどき、逆に彼の腕を引っ張りあげた。


「お？なになに？」


「帰るわよ！ほら、さっさとお金払いなさい」


「ああ大丈夫大丈夫。いつもツケだから」「大丈夫の使い方おかしいから！大金あるんでしょ？」