第29章 溺れる心【おそ松】※
「おそ松、ひとまず帰りましょう?家で寝た方が楽だと思うわ。ね?」
…なんだか私、母親みたい。こんな大きな息子を生んだ覚えはないけれど。
でも本当…子供みたいね。普段がお調子者でうるさいほど寝てる時は静かになるなんて、まさに典型的というか。
そっと、彼の頭を撫でてみる。意外にも柔らかい髪質が心地よい。
寝顔、見たいな…こっち向いてくれればいいのに。
彼を愛しく想う気持ちが募ってゆく。ただ泥酔してるだけで、ムードも何もないのに…変だな、私。
「……」
「…え?」
今…私の名前、呼んだ?
突っ伏しているせいで声がくぐもってよく聞こえなかったけど、確かに…
少しだけ顔を寄せる。もう一度、彼が何かを呟いた。
「……」
「!」
やっぱり。今度ははっきりと聞こえた。
「おそ松?起きて…「ん…」
…いきなり、視界が真っ暗になる。
というと語弊があるかもしれない。正確には、彼の顔が間近に迫り、視界が塞がれた。
唇に、柔らかい感触。
「…!!///」
あまりに急すぎたせいで、理解がやっと追い付いてきた。つまり私は、彼に現在進行形でキスをされている。
しかも…深いほう。
「…ん…っ///」「…っは…」
いつの間にか彼の手に後頭部を押さえ込まれていて、逃げ場はない。私は諦めて目を瞑り、彼のキスを受け入れた。
互いの舌が絡み合う水音が、辺りに響く。羞恥心は次第に快楽に変わっていき、私は¨もっと¨とねだるように彼のパーカーを掴んだ。
「ふ…ぁん…っ…はぅ…///」
数秒とも数分とも分からないキスを終え、唾液が伝う唇が離される。
目を開くと、少しだけ頬を赤らめている彼と視線が交わった。
「…おそ松…起きてたの…?」
「いや…寝てた。途中まで」
「途中?」
首を傾げると、彼は私の手に自身の指を絡めながら、いたずらっぽく笑う。
「そ。君が来るまでは寝てたよ?」
!?それってつまり…
「私が来てからは起きてたってことじゃない!///」「あはは、そうとも言うねぇ」「笑い事じゃないわよ!///」