第28章 嘘と本音は紙一重【一松】
日はとっぷりと暮れ、夜の道をとぼとぼと歩く。
はぁ…珍しくハゲ店に怒られたわ…そりゃそうよね、大遅刻した私が悪いんだもん…
この後一松に会いに行くつもりだったけど、遅くなっちゃったしやっぱり明日にしようかな。あ、でも猫の様子だけは見に行きたいかも。
そう思い、くるりと方向転換して先ほどの路地裏に向かう。
「…あ、いたいた」
辿り着いた先、暗がりに光る2つの眼。近付いてよく見ると、どうやら母猫のようだった。
「にゃー」
一松のおかげで人慣れしているのだろう、警戒することなく私に触れてくる。可愛い…癒される…こんな夜中じゃなかったら、きっと抱き締めて撫でくり回していたに違いない。
「あの子はもう寝ちゃった?」「にゃー」
屈んで遠慮がちに頭を撫でながら問いかける。会話はもちろん成立しないけど、声に反応して鳴いてくれるところがまた可愛い。
「これからもたまに遊びに来るわね。おやすみ」「にゃー!」
さて、名残惜しいけどもう帰ろう、と立ち上がったその時。
「…やっぱり来てたんだ」
「!」
後ろから声がして振り向くと、コンビニ袋を下げた一松が立っていた。
「一松!それ…」
「ああ…一応迎えに行ったんだけど、見事に入れ違いになったみたい。これはついでに買っただけ。煮干し、残り少なかったから」
「迎えって…夜遅くなるって知ってたの?」
「…そういうわけじゃないけど…とにかく、帰るんだろ?送ってく」
「う、うん、ありがとう」
何か話を逸らされた気がするけど、送ってもらえるのは素直に嬉しい。1人で夜道を歩くのって寂しいからな…
「ねぇ一松。手、繋がない?」
「…は?な、なんで?」
「理由がないとだめなの?」
「……べ、別にいいけど」
僅かに差し出された手を取り、歩き出す。
なんでかな…今日は彼に甘えたくてたまらない。
昼間、あんなに優しげに猫の世話をする彼を見てしまったからなのか…ううん、今に始まったことじゃない。
思い返せば、十四松と3人で出掛けた時も、彼は猫には優しい表情を見せていた。
そう、猫には…