第28章 嘘と本音は紙一重【一松】
幼なじみ以上、恋人未満。それが、私と6つ子の関係。
そこに愛がないわけじゃない。私が、彼らを選べずに迷っているだけ。
この数日ではっきり分かった。
トド松やチョロ松の扱いに怒りを露にしたのは、それだけ二人のことを大切に想ってるから。
要は、単なる嫉妬。
今だってそう。猫にまで嫉妬しちゃってる。
これも恋愛感情ゆえなのかなと思うと複雑だし、なんとも言えない気持ちになるけど…
はぁ…前途多難。
「…」
「?なに、一松」
「…本当は、その…謝ろうと思って」
「謝る?どうして?」
「……だって、遅刻…しただろ。元を質せばそれ、俺の監督不行き届きが原因だし…」
そ、その発想はなかった…!!
「か、監督不行き届きって…さすがに一松でも、全部の野良猫の面倒までは見切れないでしょ?」
「いやでも…俺、総監督だし」「野良猫の世界に総監督とかあるの?!どこのアイドルグループ!?」
言ってる意味はよく分からないけど…彼なりにずっと、心配してくれていたのね。
「…ありがとう。でも一松のせいじゃないわ。だから気にしないで」
「///……あんたって、人に甘いよな」「ふふ、そうかも」
それにしても今日の一松は、いつもと違う感じ…Sっ気がないというか、闇ゼロのノーマル人間というか…
ひょっとして、こっちが素なのかな?もしそうなら。
「ね、一松」「…今度は何?」「私、今の一松の方が好き」「…な!?///」
あ、真っ赤になった。暗がりでも、彼のリアクションでなんとなく分かる。
…しかし、あっという間に立場は逆転した。
「…ほんと、なんなんだよ…こっちは必死に耐えてたのに…!」「きゃっ!」
急に力強く抱き締められ、唇を奪われる。でも強引さのわりには、その口付けはいつもより優しかった。
「…い、一松…///」
「…油断しすぎ。また襲われたいの?」
「!///」
彼の瞳の奥に、妖艶な光が宿る。
……前言撤回。
優しい彼も、少し強引な彼も、
私はどちらも同じくらい、好きなのかもしれない…―