第28章 嘘と本音は紙一重【一松】
「分かったわ。とりあえず一松に相談してみる。ありがとう、おそ松」
「俺大したことしてねーよ?礼なんかいいって。あ、一松は多分いつもの路地裏だと思うよー」
笑顔で手を振るおそ松に見送られ、松野家を出たはいいものの。
¨いつもの路地裏¨ってどこよ…!
うっかりしてたわ。なぜ聞き返さなかったの私。
ただでさえ時間が押してるのに、今から周辺の路地裏を探し回るとか無理ゲーにも程がある!
彼の性格的にそんな遠出はしなさそうだから、自宅近辺だとは思うんだけどな…とできるだけ周囲を細かくチェックしながら歩いていると。
「あ…!」
数メートル先、紫のトレーナーを着た一松らしき人物を発見!
彼はキョロキョロと辺りを見回してから、細い路地裏に入っていった。ナイスタイミング!
急いで追いかけ、建物の影に身を隠しながらそっと様子を窺う。薄暗くて見えづらいけど、確かにあの背格好は一松だ。その彼を囲うように、野良猫が数匹いる。
声をかけようか迷う。いや遅かれ早かれではあるんだけど、少し観察してみようかな。
ゆっくりと近付き、見えやすい位置で止まる。後ろを向いているため、まだ私には気付いていないみたい。
「…よしよし…いい子にしてた?」
わ、あの一松が猫をあやしてる…!
「にゃー、にゃー」「にゃぁ〜」
猫の方もすっかり一松に懐いているらしく、自ら体を擦り寄せて甘えている。
「…お前ら、くすぐったいって。ほら、煮干し食べる?」「にゃーっ」
……なんだか、
顔は見えないけど、声色からしてすごく幸せそう…本当に猫が大好きなのね。
もしかしたら、私といる時よりももっと…
「にゃー?」「…は!」
子猫の鳴き声で我に返る。そうだ、こんなところでのんびりしてる暇はない!
私は一松観察を切り上げ、彼に話しかけることにした。
「一松ー…ごめんね、ちょっといい?」Σ「…!?」