第28章 嘘と本音は紙一重【一松】
大人ならともかく、まだちっちゃいからなぁ…あまり長時間目を離すと危険な気がする。バイトの間ミルクもあげられないし。
誰かに預ける?でも誰に?
と、そこまで考えて、名案が頭を過った。
いたわ。いるじゃない、適任が。いっそそのまま託してもいいかもしれない。
そうと決まれば行動あるのみ!さっそく向かうわよ!
子猫と一緒にやってきたのは、適任が大勢いらっしゃるここ、松野家。
ニート×6なんだから、猫一匹のお世話くらい余裕よね!たまに様子は見に来るし、飼い主探しもするけど、とりあえず頼むだけ頼んでみよう。
「にゃー?」
何かを悟ったのだろうか。抱きかかえている子猫が上目遣いで私を見上げてくる。
「大丈夫よ。問題児ばかりだけど、優しい人たちだから」「にゃー」
ふふ、この子人間の言葉が分かるのかしら?可愛いけど私じゃあなたを飼ってあげられないの。ごめんね。
チャイムを押そうとして、思い出す。そういえば知り合いはみんな勝手に入ってくるって、前にカラ松が言っていたっけ。
ガラッ「ごめんくださーい」
やはり鍵はかかっておらず、私は戸を開けて玄関の中まで入り、声を上げる。やがて居間の方から赤いパーカー姿の彼が出てきた。
「…およ?じゃん!なになに、俺に会いに来たのー?」
「違う。おそ松だけ?」
「んだよ冷たいなぁ〜。他の奴らなら出掛けてっけど、誰に用事?」
おそ松しかいないんだ…うーん、ちょっと不安だけど、時間もないし…
「ってかその猫どしたの?君のペット?」
「ううん、昨日拾ったの。でもうちじゃ飼えなくて…」
簡単に事情を説明すると、おそ松はひとしきり悩んだのち、ぽんと手を叩いた。
「あ!そういうことなら一松に相談してみればいいんじゃない?」
「!」
そっか!6つ子の中でも究極の猫スキーな彼なら、いいアドバイスをくれるかもしれない。ううん、それどころか世話も快く引き受けてくれるかも!
「いやぁうちもさ、ペット厳禁なんだよねぇ。一松の野良猫みたいに連れ込む分にはまだいいんだけど、飼うってなるとまた話が違ってくるんだよ。主にチョロ松あたりがうるさくてさぁ」