第28章 嘘と本音は紙一重【一松】
「にゃー、にゃー」
むむむ…むむむ…
どうしたものか…
子猫を目の前で抱え上げ、にらめっこすること小一時間。バイトの出勤時間が迫っているため、そろそろなんとかしなければならない。
…え?一体どういう状況なのかって?
発端は、そう…昨日の夜だったわ。
***
十四松と別れ、アパートに帰ってきた私を出迎えたのが、この子猫だった。
「にゃー」
「…ん?」
私の部屋の玄関扉の横に、小さな段ボール箱が置いてあって。
その中にちょこんと入っていたのが、
「…猫?え、なんでこんなところに?」
「にゃー」
まだ生後間もないであろうその小さな生き物は、くりくりとした大きな瞳で私を見つめてくる。
おまけに可愛らしい声で鳴かれれば、そりゃあ…情も移るわけで。
私は屈んで猫を抱っこし、一応首輪などを確認してみる。予想通り、何もつけていない。完全に捨て猫だろう。
というか、
¨拾ってください¨
って段ボールに書いてあるし!
なんつーピンポイントな捨て方なのよ!普通道端とかに置くものなんじゃないの、なぜ人んちの前に堂々と?!
「にゃー…」
「…元気、あまりないわね」
どれだけの時間ここにいたのか、少なくとも朝家を出た時にはいなかったから…それでも半日くらいは経つのかな?
段ボール箱を覗き込んでみる。一応、エサだと思われる煮干しが入っていた。子猫がこんなの食べれるわけないでしょ!
捨てた人の非常識ぶりや無責任さも大概だけど、このまま放っておくわけにもいかないし…
「…仕方ない。飼ってくれる人を探す間はお世話しよう」
***
…と、いうわけで現在に至る。
動物なんて飼ったことがないから、昨夜は猫を買ってる友人に電話をしていろいろ聞いてみたんだけど…
世話らしい世話といったら、拾ったあと急いで買ってきた猫用ミルクを与えただけ。そのうち寝ちゃったから基本放置プレイだったわ…
そもそもこのアパート、ペット禁止なのよね。隠れて飼ってる人もいるらしいけど。よくもまぁ、玄関先に堂々と置かれてて誰にもバレなかったものだわ。
…で、ここからなのよ、本題は。バイト中、この子をどうするか?ってことなのよ。