第5章 松野カラ松という男
仕事が終わり、裏口から外に出ると、なぜか扉のすぐ側にさっきの不審者が立っていた。
「ひっ!?」
なっ、なな、なんでこんなところに?!
男はこちらに気付くと、嬉しそうに駆け寄ってきた!
Σ「きゃあぁぁーっ!?」Σ「えっ?!」
全速力で逃げる私。傘を差すのも忘れ、ただひたすら走った。
「ちょっ、なんで逃げるんだ!待ってくれ!」
案の定追いかけてきてる!怖い!!
「いやぁぁっ!来ないで!本当に警察呼ぶわよ!!」
「?まさか俺が分からないのか?!」
「分かるわけないでしょバカ!いいから追いかけてこないでよ!」
叫びながら懸命に走るも、次第に男の足音が近付いてくる。そして…
「っ…もう止まれ!ちゃん!」
「きゃッ…!」
細い路地を曲がったところで、とうとう腕を引っ張られ捕まってしまった。
というか今、私の名前…
「す、ストーカー?!ストーカーなのね?!」
「なぜそうなる!?俺だ、カラ松だ!」
「…は…?カラ松…?」
ぽかんとしていると、彼はサングラスを取って顔を見せてくれた。
その顔は確かに…
「カラ松くん!…なの?」
「え、なぜそこで聞き返すんだ?」
「いやだって…顔と名前がまだ一致しないんだもん…」
それよりも、昨日のおそ松くんよりなんか凛々しくない?昔はみんな容姿は全く同じだったのに。
けど、思い返せば…おととい6人に会った時、みんな違う色のパーカーを着ていたし、雰囲気も異なっていたような?復讐で頭がいっぱいでよく見てなかったし会話も聞いてなかったから断定はできないけど。
「ああ…そうか。君は小3の頃までの俺たちしか知らないものな」
「う、うん…」
「だが俺が次男のカラ松であることは事実だ。そして君に害を成すつもりは全くない。どうかこれだけは信じてくれないだろうか?」
「え、えっと…」
…あれ、私…またドキドキしてる。
昨日もそうだった。でもあれは押し倒されたからだと思ってたのに。
どうして…?