第26章 誘惑に負ける男【チョロ松】
「…そうなのね。ありがとう、チョロ松」「……は?」
きょとんとしている彼の腕を掴んで立たせ、私は雑誌を手渡した。
「でも、張り切りすぎもよくないわ。お互い、もっと気楽にいきましょう?大体、¨デート¨とは私、一言も言ってなかったはずだけど?」
「え…あ!?///ごっ、ごめん!僕、か、勝手に勘違いして、浮かれちゃってて…!///」
…やっぱり私、気の強い彼も好きだけど、照れ屋でちょっとヘタレっぽい彼の方が好きかもしれない。
「ふふ、冗談よ。デートのつもりで誘ったの。時間も惜しいし、まずはレストランに行かない?」
「あ、ああ、うん…そうだね」
私たちは頷き合い、自然と手を繋いで歩き出す。この分なら今日こそ、デートらしいデートができるかも!
…という私の期待は、突然の来訪者により見事に打ち砕かれた。
「見つけましたぞ、松野氏!!」「え?」「な、なに?」
大声が聞こえたかと思えば、間もなくして前方から十数人の男性の集団がこちらに全速力で迫ってきた!
ドドドドドーッ「ちょ、な、ナニアレ!?チョロ松のライブ仲間じゃないの?」「あ、あいつら、こんなとこまで来やがって…!逃げるよ、ちゃん!」
しかし、逃走を図るよりも早く、私たちはドルオタ集団に囲まれてしまった。
「きゃあ!ほ、本当になんなのよ、あなたたち!」「く…っ!」
集団の中から、代表格と思われる1人の男が一歩前に出た。
「松野氏!今日はにゃーちゃんのライブですぞ!まさかお忘れですか?!」
…にゃーちゃんのライブ?
「ばッ…!わ、忘れてないよ!けどこれからは控えるって前伝えただろ!」
「しかし今日のライブは、もれなく参加者全員がにゃーちゃんとの記念ツーショット写真撮影可&握手とハグ可能なスペシャルイベント付きですよ?」ぴくっ「…え?」
「氏は半年前から楽しみにしていたではありませんか!行きましょう、今すぐ!」「〜〜〜っ…!!」
…え?あれ?この流れ、もしかして。
「チョロま「ごめん、ちゃん!この埋め合わせは必ずするから!!お前ら、行くぞ!」「おぉーっ!!」ダダダダダーッ
…………
ウソでしょ……
かくして、私はその場に置き去りにされ、デートはまたもや中止となったのだった…―