第26章 誘惑に負ける男【チョロ松】
こ、これは、声をかけないと止まらない感じ…?周りの人たちも案の定ドン引きしてるし、彼の名誉を守るためにも、と、止めなきゃ…!
私は覚悟を決めて、数歩彼に歩み寄る。そして肩をぽんと叩いた。
「あ、あのー…チョロ松?こ、こんにちは」
Σ「…!?うわぁぁぁッ!!///」Σ「きゃぁぁぁっ!?」
な、なぜ叫ぶの?!もう私どうすればいいか分からないわよ!
彼は驚きのあまりベンチから転げ落ち、地面に尻餅をつく。ガイドブック的な雑誌もいつの間にか放り投げられていた。
真っ赤な顔で口を金魚のようにぱくぱくさせながら、私を見上げてくる。…よほど今の姿を見られたくなかったのかしら?
「は、はは、早かったね、ちゃん…ま、まま、まさかもう来ていたとは、お、思わなくて…!///」
「10分前には着いちゃってたんだけど…な、なんかごめんね、チョロ松。さっさと声かけておけばよかったわ」
「10分前!?じゃ、じゃあ、い、今の、み、見て…っ」「あー…うん」「わぁぁッ!?///お、お願い、何も見なかったことにして!何も聞かなかったことにしてください!!」「必死ね…」
全く、欲深いというかなんというか。ポイントアップだのなんだのばっちり聞こえちゃってたんだけど、どうしようかしら。
私は放り投げられたままのガイドブックを拾い上げ、適当に中を読んでみる。チョロ松が側で奇声を上げるもお構い無し。
「¨いま恋人たちに人気の定番デートスポット特集¨…?」「わ、わざわざ読み上げないでちゃん!羞恥心が倍増するから!///」
ちょっと興味が湧いてきたので、どんどん読み進めていく。へぇー、最近はこんな場所が流行りなんだ。
「チョロ松、この雑誌どうしたの?」
「…え?あ、ああ、その、トド松が持ってたのを借りたんだよ。僕、その手の知識に疎いからさ…で、デートって、下調べが必要なんじゃないかと思って…」
しどろもどろになりながらも懸命に説明してくれる彼。最初はつい憐れみそうになったけど、形はどうあれ私のために頑張ってくれたのが伝わってきて、思わず頬が緩んだ。