第20章 ¨好き¨の意味【十四松】※
かくして、
松野家に到着。
「あれ、おかしいな…どこを間違ったんだろう…」「、入ろうよー!」「アッ…ハイ」
お、落ち着くのよ、私…ここは私の家じゃない=松野一家が在宅中=二人きりではない以上絶対安全安心!心配することなんて何もないわ。
言われるがままに家に入る。しかしやけに中が静かだ。
「あんれー、兄さんたちいないのかなー?僕ちょっと探してくるね!」「う、うん」
家中を探し回り、戻ってきた十四松の衝撃の一言。
「誰もいなかった!」
☆SU・E・ZE・N☆(据え膳)
ハンマーか何かで後頭部をこう、ガツンッ!と殴られた気分だわ。なんで誰もいないのよ!今夕方よ?せめておじさんとおばさんくらいいてよ!なんなのこの家!
「あはは、珍しいね。みんなパチンコかなー?あ、座っていいよー」「は、はい…」
だらだらと冷や汗が流れ落ちる。いともたやすく二人きりになってるんですが!心臓バクバクなんですが!
は!い、いやまだ希望はある!だって野球したいって言ってたし!そう、野球!
「じゅ、十四松!野球しに行かない?」
「え、やきう?」
「うん!行きたいんでしょ?私でよければ付き合うわ!」
彼は嬉しそうに瞳を輝かせると、「道具持ってくるね!」と言って2階に上がっていった。
ふぅ、とりあえずこれで難は凌いだわ。野球して時間潰せば、戻ってくる頃には誰かしら帰ってきてるはず。
…しかし。
スパァンッ!「!なくなってた!」「え?」
「あんね、野球用具一式!いつものとこになかったの!僕ちゃんとしまってたはずなのに、なんでだと思うー?」
そ、それを私に聞かれましても!
仕方ない、野球の希望まで絶たれてしまったらどうしようもないわ。
「一緒に探してあげる。えっと、2階にあるのよね?」
「!!」
立ち上がって居間を出ていこうとすると、
「…駄目!」ガシッ「きゃ!?」
後ろから強い力で抱きすくめられ、一瞬足がふらついた。
「じゅ、十四松?どうし…
「さ、探さなくていいから…」
「え…でも、野球したいんでしょ?」
気のせい、かな…十四松の体、震えてる…?
「……野球は、好きだよ。でも今はしたくない」