第18章 甘い甘い蜂蜜のような【トド松】※
…冗談はさておき。
私はトド松を別の部屋まで連れていくと、救急箱を持ってきて彼の手当てをし始めた。
といっても見た目ほど怪我はひどくなく、血を拭き取ったらほとんど目立たない傷ばかりで、絆創膏を貼って終了。ちなみに天井の穴はすでに直ってる設定よ。この世界の構造って便利ね!
「あ、ありがとう、ちゃん。それとごめんね、天井突き破っちゃって」
「本当よ。このアパートが2階建てだったから被害がうちだけで済んだものの…いえ、うちだってこんな被害被りたくはなかったけどね」
「ごめんね…十四松兄さんには帰ったらちゃんと言っておくよ。次からはもっと投げる力緩めてって」
「ぜひともそうしてね。…ところで、トド松」
「ん?なぁに、ちゃん」
ぎゅっ
「……なんで私の手を握るわけ?」
「君が可愛いから♪」ニッコリ
「離せやゴルァ」「怖いよ?!」
そう…登場があまりに唐突で忘れかけてたけど、こいつ初っぱなから私に睡眠薬を盛ってラブホに連れ込んだとんでもない末弟なのよね。
巷ではドライモンスターとしても有名な腹黒あざトッティらしいし…手当てはしたんだから、さっさとお引き取り願おう。嫌な予感が止まらないもの。
「動けないから離して」
「や・だ☆」「その澄んだ瞳をくり貫いてやろうか…」Σ「だから怖いよ!?」
でも、気のせいかしら…今の彼からは、あの時の邪悪さが感じられない。
吹っ飛ばされたショックで人格が修正された?まさかね。
私が不審がっていると、彼は眉尻を下げて瞳をうるつかせた。
「…ねぇちゃん。君、なんだか僕のこと疑ってる…?」
チラッと上目遣い。そういうのが心底あざとい!と分かってるのに良心が痛む!なんでよ!
「う、疑うも何も…その原因を作ったのはトド松の方なんだからね!」
「…うん、そうだよね。僕、君に酷いことたくさんしちゃったし…この間の件も、許してもらえたとは思ってないよ」
申し訳なさそうに目を附せながら、彼は辿々しく言葉を紡ぐ。
「でも、だからこそ君ともっと分かり合いたいんだ。そのためにはまず、僕を信じてほしい。…無理、かな…?」