第16章 両片想い【一松】※
…どれくらい経っただろう。
火照った体を引き摺るようにリビングのソファーに転がり込み、私は眠るでもなくただぼーっとしていた。
頭はだいぶ冷静になってきて、よく考えればこれでよかったのかな、なんて漠然と思ったり…
でも体の熱だけはなかなか収まってくれなくて、今でも下半身が疼いている。
一松のバカ…今度会ったらただじゃおかないんだから…!
唇をきゅっと引き結び、感情が溢れ出そうになるのをなんとか堪える。
このまま寝てしまえたらどんなに楽だろう…と、無理だと分かっていても瞼を閉じようとした
その時。
ガチャ、バタン「…ただいまー」
「!?」バッ
え、い、今の声って…!
私が上半身を起こしたのと、¨彼¨がリビングに入ってきたのは、ほぼ同時だった。
「…起きてたんだ。不貞腐れて寝てるかと思ってたんだけど」
「い、一松…!」
何やらビニール袋を持った一松が、私に近付いてくる。
「そ、それ何…帰ったんじゃ…」
「ああ、あれ嘘。薬局行ってきただけ」
「薬局…?はっ!」
ま、まさか…!
彼は袋からゴムを取り出すと、それを見せつけるかのように私の前で揺らした。
「これでいいんだろ?…ほら、続き、する?」
「…!///」
彼は…本当によく分からない。
ドMで、猫に変身できる謎体質の変態のくせに、
こういうところは律儀っていうか…無理やり襲おうとはしないところが、
優しい…のよね。
「…す…する…///」