第16章 両片想い【一松】※
「…いや、しかし「別にいいよな?」ぐ…」
一松に鋭い眼光で睨まれ、カラ松は押し黙ってしまう。対して私は、いまいち状況把握ができていない。
二人して黙っていることは、¨肯定¨を意味する。そう受け取ったのだろう。
一松はニヤリと笑みを浮かべた。
「…じゃあ行こう、。ああ、みんなには遅くなるって伝えておいてよ、¨カラ松兄さん¨」
それだけ告げ、彼は私の手を取り歩き出す。
カラ松は…何も言わない。ただ小さく拳を握りしめ、何かに堪えているようだった。
「あ、あの、カラ松!またね!」
なんの挨拶もなしに別れるのはさすがの私も気が引けたので、振り向き様彼に向かって叫ぶ。
「…!」
彼はほんの少しだけ笑顔を作り、手を振って見送ってくれた。
「…ほら、さっさと行くよ」
「あ、うん…」
一松、なんで不機嫌そうなのかしら。私がカラ松といたから?
そういえば前も家まで送ってくれたことがあったわね。十四松と3人で出掛けた帰りに…
あ。
『。…一松兄さんには気をつけたほうがいいよ』
ふと、あの時の十四松の台詞を思い出す。
『油断してると、君なんてすぐ食べられちゃうから…覚悟がないなら、二人きりにならないことだね』
二人きり…
横目でちらっと彼を見る。
本当にマスクのせいでいつも以上に表情が読み辛く、何を考えているのか分からない。
不機嫌そう、というのはあくまで言葉の節々にトゲがあったからそう感じるだけで…実際は違うのかもしれないし。
覚悟…十四松の言ってた覚悟って、どういう意味なんだろう。
気を付けたいのは山々なんだけど、思い出すのが遅すぎた。
だ、大丈夫…よね?